研究概要 |
本研究は主に虚血・血流障害が惹起する軽微な胃粘膜障害の発生・修復過程を^<51>Cr-EDTAクリアランス測定法で定量的に研究することを目的とした.(1)内因性酸が微細粘膜障害発生に果たす役割:まず、H2受容体拮抗剤(T593),プロトンポンプインヒビター(PPl;オメプラゾール)で強力に内因性酸を抑制し,胃虚血による微細粘膜障害を検討した.いずれの薬剤投与でも胃内pHは6.8-7.0となり,虚血による^<51>Cr-EDTAクリアランスの上昇は抑制された.次に,胃内腔をリン酸緩衝液で潅流し内腔の酸を中和した状態で検討したが,虚血によるクリアランスの上昇は抑制されなかった.しかし,H2受容体拮抗剤,PPlを再度リン酸緩衝液潅流下に投与すると虚血によるクリアランスの上昇は明らかに抑制された.これらの結果から,この微細胃粘膜障害には分泌された酸自体は重要ではないが,ATPを消費する酸の産生・分泌が重要意味を持つことが判明した(JClin Gastroenterol 21:S108-112,1995).(2)下部消化管における虚血性粘膜障害モデル作成計画:将来の門脈圧亢進症モデルの粘膜障害の検討のため,^<51>Cr-EDTAクリアランスを指標とする虚血性粘膜障害モデルを確立を試みる過程で,下部消化管虚血は上部とは異なり致命的ショックを誘発することが判明した.本ショックは下部腸管微細粘膜障害と内毒素進入の関連の興味から研究をすすめたが,補体反応系がショックを誘発するカギとなり,血中カルボキシペプチダーゼが防御的役割を有していることを見いだした(投稿中).さらに,補体系を抑制すると虚血によるクリアランス上昇が抑制されることから微細粘膜障害に補体反応が重要であることを見いだした(一部を1996年米国消化器病学会で発表する).(3)増殖因子とrestititution:微細粘膜障害の迅速な修復(restitution)の速度は^<51>Cr-EDTAクリアランスの回復曲線の解析で定量化できることを見いだし一定の成果を得たが,restitutionの速度を変える因子は現時点で確認できていない.
|