研究概要 |
肝細胞癌から採取したDNAと同一患者の末梢血単核細胞から採取した正常のDNAをともに同一の制限酵素て処理し、それぞれのDNA断片を特異的なprimerを用いてPCR反応にて増幅をし、この操作を繰り返すことにより肝癌に特異的な遺伝子異常の検索を行った(representative differene analysis,RDA)。しかし、本法ではPCRによる増幅が毎回微妙に異なるためか同一の遺伝子異常が再現性良く検出されるわけではなく、同一sampleから出発しても異なった遺伝子異常を検出することが多かった。この原因としては、癌細胞の多くの遺伝子異常の内、PCRによってその都度増幅されてくる遺伝子が異なっているためと思われた。これらの遺伝子断片のなかには、いくつかのすでに報告された癌遺伝子やornithine decarboxylase(ODC)のDNA sequenceが含まれていた。我々はすでにODC活性が肝細胞癌で非癌部に比し活性が高いことを報告しているので(Hepatology,1994;20:1179-1186)、まずODCの遺伝子異常の有無について検討をはじめた。その結果ODCの蛋白としての性質に重大な影響を与えうるPEST領域k欠損したcloneを分離した(現在報告されている蛋白の中でODCは最も半減期の短い蛋白として有名であるが、これらの蛋白にしPEST領域が共通して認められる)。PEST領域の欠損したODCの酵素としての性質を検討するため、このcloneをreticulocyte lysateを用いて蛋白発現を試みた。PEST領域の欠損ODC蛋白は正常に比べ蛋白の分解が遅延し半減期の延長が認められた。さらに、肝細胞癌の組織学的な進展度が増すにつれ、ODC geneのこのような異常がより高率に検出された(投稿中)。これらの実験と平行して、遺伝子異常を一括して捕らえるためにRDA産物を標識してfluorescence in situ hybridization(FISH)を試みている。
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