特発生炎症性腸疾患患者の病変部に存在するリンパ球のT細胞抗原レセプターVβレパートア-を解析することにより、局所における免疫刺激の病態を明らかにし、その原因となる病因因子の性質を明確にすることを目的として研究を行った。クローン病および潰瘍性大腸炎患者の病変部局所のリンパ球を分離し、そのT細胞抗原レセプターVβレパートア-を各T細胞抗原レセプターのhypervariable regionを同定しうる特異的プライマーを用いたRT-PCT法とSSCP法を組み合わせて解析した。その結果、(1)クローン病では、Vβ1、2、5.1、5.2の選択的な使用が認められ、約70%の患者においてオリドクローナルなT細胞の活性化・増殖が確認された。(2)潰瘍性大腸炎ではリンパ球がポリクローナルな活性化を受け、特定のVβの優位な増殖はみとめられなかった。(3)健常者では、特定のVβの活性化は認められなかった。(4)クローン病におけるpreliminaryな検討において、同一患者において異なった病変部に同一のDNA配列が確認され、同一のcloneの由来の増殖と考えられた。 以上より、クローン病患者では、病変部局所のリンパ球が限定された通常型抗原により選択的に活性化されていることが示唆された。特に、複数の病変部で共通に見いだされたcloneはクローン病の原因抗原を認識しているものではないかと考えられた。
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