クローン病患者の病変部粘膜においてはαβ型T細胞を主体としたリンパ球浸潤がみられる。また、様々な抗原刺激にさらされる腸管粘膜では健常者においてもCD8陽性T細胞についてはそのオリゴクローナリティーが報告されている。そこでクローン病に特異的な反応をみるために、その病変部より粘膜固有層リンパ球(LPL)を分離し、CD8陽性細胞を磁気ビーズ抗体を用いて除去したのち、残存するCD4陽性αβ型T細胞についてそのクローナリティーをPCR・SSCP法により解析した。その結果、(1)クローン病患者のLPLでは健常者や潰瘍性大腸炎患者のLPLでは見られなかったオリゴクローナリティーがみられた。(2)オリゴクローナリティーのみられたVβサブタイプは症例により異なるものの比較的共通してみられたのはVβ2、5.1、5.2、13.1、13.2であった。(3)クローン病の同一患者の異なった病変部位から分離したリンパ球を同様に解析した結果、Vβ5.2において同一のクローンがみられた。 以上の結果よりクローン病変患者の病変部においてはリンパ球が、限定された種類の抗原により選択的に刺激されていることが示唆された。特に異なった病変部から共通に見いだされたT細胞クローンは、クローン病の病変形成に深く関わっている責任抗原を認識しているものと考えられ、クローン病の病因解明に一定の方向性を与えたものと思われる。
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