研究概要 |
肝性昏睡の発生機序におけるコリン作動性神経伝達物質(アセチルコリン;Ach)の意義を明らかにするため実験的検討を進めてきた。平成6年度における研究成果について報告する。 対象と方法:急性肝不全モデル(チオアセトアミド経口投与による急性肝障害マウス)を作製し、エイコム電気化学液体クロマト装置にて脳6部位(大脳皮質、線状体、海馬、視床下部、中脳、延髄)におけるコリン(Ch)とAch濃度を測定し、合わせてモノアミン系神経伝達物質代謝(NE,DA,5-HT)との関連性について検討した。さらに、急性肝不全モデルに酢酸アンモニウムを腹腔内に負荷した際の変動についても検討した。 結果:1.急性不全群における脳内Ach濃度は線状体、延髄、中脳、海馬で対照群に比し有意に減少し、大脳皮質と視床下部では両群に差を認めなかった。2.急性肝不全群におけるCh濃度は延髄、中脳、海馬で対照群に比し有意の減少を認めた。3.脳各部位における脳内Achとモノアミンとの相関を検討すると、Achは5-HIAAと海馬、延髄において有意の負の相関を示し,5-HT系代謝との関連を認めたが,NA,DA系代謝との関連は明らかでなかった。4.急性肝不全群でのアンモニア負荷による脳内Ach濃度の変化は認めなかった。 現在、肝不全時の脳内Ach代謝とアンモニアとの関連性を明確にするために、引き続き検討中である。
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