研究概要 |
培養ラット胃粘膜細胞を用いたin vitroの研究で、胃粘膜細胞の抗酸化防御機構に関して、以下の成績を報告した。(1)内因性Cu,Zn-SODがCuキレート剤であるdiethyldithiocarbamate(DDC)により他の抗酸化防御因子(細胞内GSH酸化還元サイクル、内因性catalase活性、glutathione-S-stransferase(GST)活性)に影響することなく特異的に阻害され、DDCによるCu,Zn-SODの抑制により過酸化水素による傷害が有意に憎悪される(J Clin Invest 1994;93:331-338)。(2)胃粘膜細胞を細胞外に負荷したGSHとともに培養すると、過酸化水素による傷害は有意に抑制され、細胞外GSHにより胃粘膜細胞内GSHが有意に上昇することに基づく。これは細胞外GSHが細胞のγ-glutamyl transpeptidase(γ-GTP)により水解を受け、分解産物であるcysteineとしての細胞内への取り込み、γ-glutamylcysteine synthetaseによるGSHの再合成に基づく(Gastroenterology 1994;106:1199-1207)。この機序は、従来小腸細胞で提唱されてきた摂取機序とは明らかに異なり、消化管においては部位によりGSHの摂取機序に異同があることを示唆した。胃粘膜細胞傷害機序に関しては、(3)オキシダントストレスが細胞傷害に先行して脂質過酸化を引き起こし、この両者が細胞内鉄イオンのキレート化により抑制されることより脂質過酸化は細胞傷害の発生に密接に関連する(Dig Dis Sci(in press))。壊死惹起物質であるエタノール(EtOH)の胃粘膜細胞傷害機序について、(4)胃粘膜細胞のEtOHへの被曝によりEtOHの濃度依存性に細胞よりsuperoxide(02-)が産生され、細胞内GSH酸化還元系の抑制によりEtOHの傷害が憎悪するが、こうした現象は培養血管内皮細胞では認められない(投稿準備中)。また、(5)培養胃粘膜細胞において研究代表者が提唱してきた活性酸素の細胞傷害機序が、培養血管内皮細胞でも普遍的な現象である(J Cell Physiol 1994;160:132-140)。
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