研究概要 |
ラット胃粘膜培養細胞を用いたin vitroの研究で、胃粘膜細胞の抗酸化防御機構の役割に関して、以下の知見を見い出した。(1)オキシダント(tert-butyl hydroperoxide (tBHP))を細胞に負荷した場合、時間および濃度依存性に細胞障害が惹起される。tBHPは濃度依存性に細胞の脂質過酸化を引き起こすが、脂質過酸化が細胞傷害に先行し、細胞傷害および脂質過酸化ともにdesferoxamineあるいは1,10-phenenthrolineによる細胞内鉄イオンのキレート化により抑制される成績を報告し、脂質過酸化はオキシダントによる細胞傷害の主要な原因のひとつであることを示した(Dig Dis Sci 1995; 40: 879-886)。 (2) GSH analogueであるGSH isopropyl esterは、細胞外GSH (Gastroenterology 1994; 106: 1199-1207)と同様の機序により胃粘膜細胞に摂取され、脂質過酸化を抑制することにより、オキシダント(tBHP)に対し保護作用を発揮する(投稿準備中)。(3) Helicobacter pylori起因性胃粘膜傷害の因子として注目されるmonochloramine (NH_2Cl)の傷害性は、その前駆物質であるH_2O_2より強く、細胞内GSHが保護作用を有するが、鉄イオンのキレート剤に保護効果がないことにより、その細胞傷害機序はいわゆるオキシダント(H_2O_2,tBHPなど)の傷害機序とは異なる(Gastroenterology投稿中)。壊死惹起物質であるエタノール(EtOH)の胃粘膜細胞傷害機序について、(4) EtOHへの被爆によりEtOHの濃度に依存して細胞よりsuperoxide (O_2^-)が産生され、細胞内GSH酸化還元系の抑制によりEtOHの傷害が増悪するが、こうした現象は培養血管内皮細胞では認められないことより上皮細胞と内皮細胞ではEtOHの細胞傷害機序あるいはEtOHの代謝機構が異なると推測された(投稿準備中)。
|