消化管粘膜あるいは血管内皮培養細胞を用いた研究で、胃粘膜細胞の抗酸化防御機構に関して、(1)内因性CuZn-SODがCuのキレート剤である(iot)yldithiocarbamatc(DDC)により特異的に阻害され、DDCによるSODの抑制によりH_2O_2による細胞傷害が増悪する。(2)胃粘膜細胞に細胞外GSHを負荷すると、H_2O_2による傷害は抑制され、この保護作用は胃粘膜細胞による細胞外GSHの摂取による。これは細胞外GSHが、細胞のY-glutamylranspeptidascにより水解を受け、cysteincとしての細胞内への取り込み、Y-glutamylcystcine synthctascによるGSHの再合成に基づく。この機序は、小腸細胞の細胞外GSH摂取機序とは異なるものであり、消化管の部位によりGSHの摂取に異同があることが示唆された。細胞傷害機序に関しては、(3)オキシダントが傷害に先行して脂質過酸化を引き起こし、この両者が鉄イオンのキレート化により抑制されることより、脂質過酸化は細胞傷害の主要な原因のひとつである。(4)GSH analogueであるGSH isopropylcsterは、GSHと同様の機序により胃粘膜細胞に摂取され、脂質過酸化の抑制により、オキシダントに対し保護作用を発揮する。(5)Hclicobactcr pylori起因性胃粘膜傷害の因子として注目されるmonochloramineの傷害性は、前駆物質であるH_2O_2より強く、細胞内GSHが保護作用を有する。壊死惹起物質であるエタノール(E10H)の傷害機序について、(6)E10Hへの被爆によりその濃度に依存して細胞よりsuperoxideが産生され、細胞内OSH酸化還元系の抑制により傷害が増悪するが、この現象は内皮細胞では認められないことより上皮と内皮ではE10Hの傷害機序あるいはE10Hの代謝機序が異なる。また、(7)胃粘膜細胞において研究代表者が提唱してきたオキシダントの細胞傷害機序は内皮細胞にも共通する普遍的な現象であることを明らかにした。
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