科研費研究成果報告書概要 1)HCV超可変領域の変異とその臨床的意義 HCVに様変異に富むウイルス性に対する免疫反応を解析する際には、ウイルスの変異を念頭において研究を進める必要があるということは、B型肝炎においてすでに明らかである。同様の観点から、我々はHCVについても研究を進めた。その結果、患者の臨床症状と関連して、HCVの外被蛋白(gp70)をコードしていると考えられている遺伝子領域内の超可変領域1(HVR1)の突然変異が起こる事を見いだした。即ち、C型急性肝炎患者において、感染初期に認められたHCVの消失後HVR1ペプチドに対する抗体が出現し、再度の血清ALTの上昇に伴い出現したHCVのHVR1の核酸配列を持っていた。これらの結果は、この領域ペプチドに対する免疫反応が、ウイルスの消失と密接に関連している可能性を示唆している。 2)HCVコアー抗原の免疫学的多様性について。 HCVコアー蛋白について、アミノ酸配列に従って10種類の合成ペプチドを作製し、それぞれについてC型肝炎患者血清中の抗HCV抗体が認識するエピト-ブの解析を行った。その結果、少なくとも7種類のペプチドがHCV感染患者血清注のIgG型免疫グロブリンと反応し、HCVコアー蛋白内には多数のエピトープが存在していることが明らかとなった。さらに、これらのペプチドに対する抗体は、HCVの急性期と慢性期において、出現する抗体が認識するエピトープが微妙に異なる事を見いだした。この事実は、従来血清学的には、鑑別が困難であった急性肝炎と慢性肝炎の新しい鑑別法として有用であると考えられる。
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