研究概要 |
1.門脈圧亢進症を有する肝硬変患者において胃粘膜血行異常に直接的に関与する門脈血行動態に及ぼす影響をVasopressin, Nicardipine (Ca拮抗剤)およびIsosorbide Dinitrate(亜硝酸剤)について検討を加えた。 1)門脈圧亢進症を有する肝硬変患者18例においてVasopressin+Nicardipineの同時投与およびVasopressinの単独投与の2方法で門脈血行動態および肝機能に及ぼす影響を検討した。9例にVasopressin 0. 4 units/minを、残りの9例にVasopressin 0. 4 units/min+Nicardipine 0. 3 mg/minを40分間投与した。Vasopressin+Nicardipineは自由門脈圧と門脈圧勾配を有意に低下させた。この低下はVasopressin単独投与と有意差はなかった(自由門脈圧: -14%vs-16%,門脈圧勾配: -29%vs-31%)。またVasopressin単独投与では肝血流(-34%, P<0. 01)およびICG内因性クリアランス(-22%, P<0. 05)の有意な低下がみられた。しかしVasopressin+Nicardipine同時投与群ではこの2つのパラメータに有意な変化は生じなかった(-8%および-3%)。従って、NicardipineはVasopressin投与で惹起される肝機能低下を改善させるがVasopressin以上の門脈圧降下作用はないと結論した。 2)肝硬変性門脈圧亢進症患者9例、コントロール4例にIsosorbide Dinitrate'を40mg/dayで4週間投与後門脈血行動態を検討した。有意な肝血流の低下を伴わず(0. 72±0. 29→0. 71±0. 34l/m)肝静脈圧勾配は低下した(-18%, P<0. 02)。合併症もなかった。従ってIsosorbide dinitrateは肝硬変性門脈圧亢進症患者に長期投与可能な薬剤として期待できる。 2.更にNitroglycerinについても、肝硬変性門脈圧亢進症患者30例について胃粘膜血流と門脈圧について検討した。門脈圧はMajor collateralを有する群で有意に低下した。またnitroglycerin 1.0μg/kg/mの投与により胃粘膜の血液量(spectrophotometryによるIHB)は有意に低下(-16%, P<0. 001)し、門脈圧亢進症患者の胃粘膜のcongestionを改善させると結論した。
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