平成6年度に難治例2例から得られたC型肝炎ウイルスの全配列の決定は終了した。これら2例で共通のアミノ酸の変異はE1領域に1カ所認められるのみであった。平成7年にはこの変異が真に治療抵抗性と関係があるのかどうかを多数例で検討し明らかにすることを目的として研究を行った。インターフェロン治療例から、βインターフェロンを600万単位連日投与してもウイルス量の減少が極めて不良であった症例と、反対に、治療前のウイルス量が10^<6.5>copy/mlと多く、難値であると予想されたにも拘わらず、ウイルスが急速に減少し、治癒した症例について全配列を決定して検討を行った。E2/NS1 領域、NS2 領域、NS5A領域には多数のアミノ酸の変異が認められた。しかし、これらの変異のうち、共通するものがないかどうかについて検討したところ、難治性を予測させる共通した変異はみられず、1アミノ酸の変異からインターフェロン抵抗性を決定することは困難であると考えられた。そこで、Enomoto et al.によりISDRとして報告されNS5A領域のアミノ酸配列について、検討を行った。この領域では上記4症例でも比較的変異の多くみられた領域であった。この領域の配列を著効例と無効例で比較すると、著効例で明らかに変異が多く認められ、この領域のアミノ酸配列の変異がインターフェロンの治療効果と関連していることが確認された。それではそのような症例には変異の少ないウイルスは存在しないのだとうか?このことを検討するために、まず、典型的な治療反応例2例から各30クローン以上の配列を決定し、wild typeの存在の有無について検討した。その結果、各症例から得られるクローンはほぼ均一であり、このような少数の検討からはwild typeの存在は認められなかった。しかし、さらに微量のwild typeの存在は否定し得ないため、PCRによる検討を行った。すなわち、wild typeに特異的なprimerで、しかも高変異例の配列とはannealしないようなprimerをデザインし、PCRを行った。すると、薄いが明らかにexpected sizeのbandが検出された。すなわち、高変異例の中にも少量のwild typeは存在していることが明らかとなった。
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