1)6個のアメーバ、プロテウスで、静止状態から偽足を出す過程で、細胞内圧を測定した。アメーバの細胞内圧は、細胞が静止状態にあるうちに、3.4±3.6cmH_2O(平均±標準偏差)から、13.1±12.6cmH_2Oへ増加した。偽足は、細胞内圧が5.2±3.6cmH_2Oまで下がった時に生じ初め、偽足の伸展とともに細胞内圧は、さらに減少した。このことは細胞が静止状態にある時に、おそらく細胞皮質の細胞骨格の収縮により細胞は弾性エネルギーを蓄えることができることを示唆している。さらに、偽足の伸展とともに細胞内圧が減少したことは、細胞皮質に蓄積された弾性エネルギーが、局所の表面張力の減少により生じた偽足の伸展に伴う細胞内液の粘性流に打ち勝つためのエネルギーに消費されたものと考えられる。 カオス、カロライネンシスの細胞内圧を、1つの細胞で2ヵ所同時にマイクロ穿刺仕し、2つの圧を同時測定した。2例では、測定中細胞は動かず、2つの圧も同様の値で増減した。しかし、測定中に細胞遊走がプローベ間でみられた例でも、2つの圧は同様の値で変化し、静水圧差の存在は証明しえなかった。 遊走細胞の細胞内圧測定は、今までに報告がなく、アメーバ、プロテウスにおける、静止状態から偽足を出す過程での細胞内圧測定は、世界で初めての知見である。カオス、カロライネンシスでの2ヵ所同時細胞内圧測定の研究では、細胞遊走中の静水圧差を示すことができなかったが、それは、静水圧差を証明できなかったのは、おそらくマイクロピペットが皮質下のゲル層に留まって細胞質流のあるゾル層に達していなかったためで、静水圧が細胞遊走の原動力であることはアメーバ、プロテウスの研究より明らかである。
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