腫瘍壊死因子受容体(TNF-RI)遺伝子を肺癌組織に移入し、腫瘍壊死因子(TNF)に対する感受性を亢進させることにより腫瘍細胞を変性に導くことができるかどうかは興味がもたれるところである。このようなTNF受容体遺伝子移入実験を今後行っていく目的で、TNF受容体遺伝子発現ベクターの作製を試みた。 プラスミドpUC19に組み込まれた55KDaのTNF受容体のcDNA(2050bp)は、両側末端に制限酵素EcoRI切断部位を有するが、cDNA内部の1271bpに同じくEcoRI切断部位を持つために部分切断法を用いた。まず0bp-1271bpのフラグメントAをBluescriptプラスミドに挿入した。次に、EcoRIによる部分切断を行い、5′末端のみが切断されたプラスミドをアガロースゲルにより分離した。その後、5′末端EcoRI切断部位とBluescriptのEcoRI切断部位を盲端処理しEcoRI切断部位を破壊した。その後、それぞれの盲端処理部分を再び盲端結合により結合した。次に、EcoRIにより3′末端を切断し、55KDaのTNF受容体の残りのcDNAフラグメントB(1272bp-2050bp)を切断部位に挿入し、再び2050bpの55KDaTNF受容体を再構築した。その後、BluescriptプラスミドのマルチクローニングサイトよりNotIおよびXhoIの切断部位を用いてcDNAを取り出し、両端にBstXI adoptorsを結合した。最後に、発現ベクターであるpEF-BOSのBstXIサイトにcDNAを挿入し、55KDaのTNF受容体発現ベクター(pEF-BOS-55KD)を作製した。同様に、75KDaのTNF受容体発現ベクターを作製した。 今後本研究の成果をもとに、作製されたTNF受容体遺伝子発現ベクターを用いて、in vivoでのTNF受容体遺伝子の発現を試みるとともに、TNF受容体の役割と肺癌に対する遺伝子治療の可能性について研究をすすめる予定である。
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