研究概要 |
肺癌患者において化学療法により末梢血中に誘導され、apheresisで採取したPBSCは長期間(5ヶ月より9年)凍結保存しても安定であり、コロニー形成試験による評価では、コロニー数(CFU-GM,CFU-GEMM,BFU-E)が凍結前に比べ8割程度までしか減少しないことが確認された。大量化学療法(CDDP 80mg/m2,day 1;VP-16 500mg/m2,day 1,2,3)後にPBSCを併用し、ED-SCLCでは通常経験されない2年生存の患者を経験した(Jpn. J. Clin. Oncol 1995)。巨核芽球中の癌遺伝子産物の検討ではRB蛋白、Cyclin A蛋白の発現が造血因子のひとつであるstem cell factor(SCF)により増加し、RBリン酸化パターンの変化がみられた。一方、G-CSFでは巨核芽球の癌遺伝子産物発現に影響を与えなかった。SCFによるRB、Cyclin Aの発現の変化と巨核芽球の分化の間に密接な関連がみとめられた(J. Cancer Res. Clin. Oncol. 1996)。化学療法後の肺癌患者骨髄造血能の検討では化学療法開始後、2週目で最低となり、4週ないし5週目で治療前の約8割まで回復した。NK細胞活性もほぼ同様のパターンで低下、回復したが、予後の悪い症例では回復しないことが明らかとなった。大量化学療法後のNK細胞活性低下はPBSCの併用により、回復の早期化がみられ、PBSCは造血機能のみならず、抗腫瘍免疫機能のrescueにも有用であることが示唆された。
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