切除不能の肺癌に対する治療は放射線療法、化学療法などであるが、白血球減少を中心とした骨髄抑制により治療成績は十分には改善されていない。骨髄移植の代替法としてのPBSCTを肺癌化学療法の治療成績向上のため検討することは重要である。肺癌患者より採取された末梢血造血幹細胞(PBSC)中には増殖可能な癌細胞は15例中1例にもみられなかった。PBSC凍結前後で単核球の生存率、CD34^+細胞比率、CD33-/CD34^+細胞比率、IL-12刺激による各種サイトカインの産生能、CFU-GM数に著変はみられなかった。これまで、2例の小細胞癌患者に末梢血造血幹細胞移植(PBSCT)を実施したが、骨髄機能の迅速な回復がみられている。巨核芽球中の癌遺伝子産物の検討ではRB蛋白、Cyclin A蛋白の発現が造血因子のひとつであるstem cell factor(SCF)により増加し、RBリン酸化パターンの変化がみられた。一方、G-CSFでは巨核芽球の癌遺伝子産物発現に影響を与えなかった。SCFによるRB、Cyclin Aの発現の変化と巨核芽球の分化の間に密接な関連がみとめられた。化学療法後の肺癌患者骨髄造血能の検討では化学療法開始後、2週目で最低となり、4週ないし5週目で治療前の約8割まで回復した。NK細胞活性もほぼ同様のパターンで低下、回復したが、予後の悪い症例では回復しないことが明らかとなった。大量化学療法後のNK細胞活性低下はPBSCの併用により、回復の早期化がみられ、PBSCは造血機能のみならず、抗腫瘍免疫機能のrescueにも有用であることが示唆された。
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