研究概要 |
肺の線維化は肺組織の非可逆的変化であり、組織傷害に引き続く治癒過程とも考えられ、進行性の場合は予後不良である。線維芽細胞増殖は線維化の過程において重要な変化であり、増殖調節の解明は治療法確立のため重要である。PGE2は線維芽細胞増殖を抑制する代表的メディエーターであることより、線維化発症の機序解明を目的とし、線維芽細胞、単球マクロファージからのPGE2産生をTh1,Th2様細胞産生のサイトカインによる調節の面より検討した。線維芽細胞をIL-1βで刺激し培養上清中のPGE2量をRIA法にて測定した。IL-1βの濃度依存的にPGE2産生は増強した。さらに、血清添加あるいはTGFβ添加によりPGE2産生は増強した。PGの律速酵素であるcyclooxygenase(COX)活性を検討すると、IL-1β刺激により増強し、COX2の特異的阻害剤であるNS-398で抑制された。mRNA発現をみるとIL-1β刺激によりCOX1発現にはあまり変化が見られなかったのに対しCOX2発現は濃度依存的に増加した。次にTh1様サイトカイン(IFNγ)Th2様サイトカイン(IL-4)のIL-1β刺激肺線維芽細胞のPGE2産生に及ぼす効果について検討した。IL-4は線維芽細胞からのPGE2産生を抑制したが、一方IFNγによる影響は見られなかった。さらに、単球/マクロファージからのPGE2産生に及ぼすTh2様サイトカイン(IL-4,IL-10,IL-13)の効果について検討した。LPS刺激単球からのPGE2産生は、COX2の発現量に依存的に増加した。上述したTh2様サイトカインをこの系に加えるとPGE2産生は抑制され、その程度はIL-4が最も強かった。一方Th1様サイトカインであるIFNγを加えてもPGE2産生に影響を与えなかった。またTh2様サイトカインはCOX2の発現をmRNA、蛋白レベルで抑制した。また、肺胞マクロファージでもIL-4によりPGE2産生が抑制された。これらの結果よりTh1様,Th2様細胞由来のサイトカインは線維芽細胞や単球・マクロファージからのPGE2産生調節を介して線維芽細胞増殖に関与し線維化病態形成に重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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