Psudomonas.cepacia (P.cepacia)は従来弱毒菌と考えられたいたが、我々は本菌による院内感染肺炎を多数経験した。また欧米ではP.cepacia感染によりCystic fibrosis患者の予後が悪化すること、が報告されている。このような背景のもと、我々の研究はP.cepaciaの病原性因子を解析することを目的とした。P.cepaciaの病原性因子として、P.cepaciaの産生する菌体外酵素であるproteaseに着目した。平成6年度の研究により、protease産生能のみを失ったP.cepacia臨床分離株は、親株に比較してその病原性の低いこと、さらにproteaseの遺伝子を有するプラスミドを再導入することにより、その病原性が回復することを明らかにした。このことからP.cepaciaの病原性においてproteaseが重要であることが推察された。この結果を基に平成7年度は、純化したproteaseの病原性の病原性の有無について検討した。proteaseの病原性への関与を直接証明する方法として、純化したproteaseを直接肺内に注入することによりマウス肺にどのような傷害を与えるかを検討した。proteaseは香川医科大学第一内科院内感染株KF-1より精製、純化したものを用いた。P.cepacia臨床分離株の培養上清を出発材料として硫安沈澱、phenyl sepharpse column chromatographyによりproteaseを純化、精製し、分子量37.5KDのものであることも明らかにした。この精製したproteaseをマウスの気管内に27G針にて注入し、マウス肺の形態学的変化を検討した。結果として、proteaseの経気管注入はdose-dependentにマウス致死率を悪化させた。また組織学的検討において、精製したproteaseの注入にて、気管支周囲の好中球浸潤、肺胞構造の破壊が認められた。また気管支肺胞洗浄液中の蛋白濃度の測定結果より、肺胞内への蛋白漏出の増加が示された。これらの結果はP.cepacia臨床分離株の病原性にproteaseが深く関与していることを示しており、実験仮説を証明しえたと考えられる。
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