昨年度には、KL-6分子上に存在してKL-6抗体の認識する抗原決定基とは異なる抗原決定基に反応するモノクローナル抗体を樹立し選択していたが、今年度は、その内のHK-7抗体を最終的に選択して間質性肺炎の臨床診断における有用性について検討を加えた。 HK-7抗体はIgMに属し、KL-6分子の糖鎖ではなく、蛋白部分に結合活性を有していることが示唆された。また、HK-7抗体を固相抗体としKL-6抗体を標識抗体としてサンドイッチ酵素抗体法によって検出されるKL-6亜分子をPEP-76分子と命名した。具体的な測定法はKL-6分子の測定法と同じく、96穴の酵素抗体法用のマイクロテストプレートを用い、HK-7抗体の濃度は10μl/mlで行った。KL-6抗体はKL-6分子の測定系と同じ濃度で使用した。すべての測定において、標準抗原を同時に測定し、検体中のPEP-76抗原値を標準化し、KL-6血に換算してその値はU/mlで表した。 健常者51名、特発性間質性肺炎患者13名、サルコイドーシス患者12名から得た血清中のPEP-76抗原値を測定した。 健常者におけるPEP-76値は中央値0.9(0.9-3.9)U/ml、特発性間質性肺炎患者では中央値54(0.9-580)U/ml、サルコイドーシスでは中央値1(0.9-13)U/mlであった。推計学的に特発性間質性肺炎とサルコイドーシスではいずれも健常者に比して有意に高値を呈した。健常者の値の対数値の分布から対数値の平均値+2SD値の実数値2.7U/mlを正常上限値とした。PEP-76の健常者のおける陽性率は5.9%、特発性間質性肺炎で92%、サルコイドーシスで33%であった。同一患者でのKL-6の陽性率に比し、特に特発性間質性肺炎での陽性率が高かった。 以上の結果から、PEP-76は間質性肺炎の新たな血清マーカーとして有望であると思われた。
|