I BAL中ないし抗原刺激BAL細胞由来のCD8+細胞に対する遊走因子ならびに活性化因子の検討の結果:BAL中のCD8+細胞の著増する夏型過敏性肺炎のBAL液中のケモカイン量を測定したところ、活性化T細胞、メモリーT細胞に遊走能を持つRANTES量が、対照としたサルコイドーシス症例、正常人例に比較して有意に高かった。RANTESと同様にT細胞に遊走能を呈するケモカインであるMIP-1αについては、現在のところ測定した限り、有意の上昇を他疾患と比較して夏型過敏性肺炎のBAL液中には認めていない。なお抗原刺激によるBAL液中の各種細胞からの遊走因子の産生の有無ならび特定の因子の同定までは至っていない。 II BAL中CD8+細胞の表面抗原ならびにT細胞内シグナル伝達の解析の結果:過敏性肺炎のBAL中のCD4+、CD8+の各T細胞サブセット上の各種接着分子の発現を検討したところLFA-1分子の発現量の増加、ICAM-1分子発現の陽性率の増加が他疾患に比べて有意にみられた。T細胞内シグナル伝達の解析の為に伝達に重要なキナーゼであるPKCについてそのアイソザイムの発現をBALT細胞と末梢血T細胞と比較したところBALT細胞においてPKCαアイソザイムの発現が特異的に低下していた。 III 動物モデルでの検討の結果:現在マウス過敏性肺炎モデルを作製し、薬剤による病変形成の修飾、BAL中の細胞分画の変化、液中のケモカインについて検討中である。 以上、夏型過敏性肺炎のBAL中に著増するCD8+細胞の機構や、そのシグナル伝達系からみた機能の特異性については、上記の結果より部分的に明らかになった。
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