好中球の感染防御と急性肺組織損傷に関する役割を明らかにすることを目的とした。顆粒球コロニー刺激因子を用いて好中球を増加させて感染防御能を強化したモルモット(G-CSF群)と、サイクロフォスファミドを前投与して白血球を減少させたモルモット(CPA群)、さらに無処置の対照(CTL)群で気道内に緑膿菌を投与して肺損傷を作成し、以下の知見をこれまでに得た。 1)緑膿菌少量投与の場合、CPA群では肺内に緑膿菌が残存し感染の管理は不十分であった。CPA群では肺微小血管透過性の亢進を認め、感染に伴う肺損傷が生じたと考えた。CTL群とG-CSF群では肺内の緑膿菌の残存が少なかった。さらにこれらの群では肺損傷指標値に変化を認めなず、肺損傷は生じなかったと考えた。 2)緑膿菌大量投与の場合、いずれの群でも肺内に緑膿菌が残存し、感染の管理は困難であった。CPA群ではCTL群やG-CSF群に比べ肺損傷指標は軽度であった。G-CSF群では 強い肺損傷が生じ、生存率も低下した。 肺局所の感染の場合、損傷刺激が軽ければ好中球が正常または増加していても肺損傷を引き起こさなかった。一方、損傷刺激が強いときには、肺損傷を引き起こし、予後を悪化させた。 以上のように緑膿菌経気道投与実験をほぼ予定通り実施することができた。ただ当初、緑膿菌中等量投与(10^6CFU)も行なう予定であったが、予備実験を行なったところ成績が不安定で、成績が明確でなかったため、少量と大量とに絞って実験を行なった。結果において、生体に加える損傷刺激の強さによって生体反応が異なり、好中球は生体にとって有利にも(肺炎時の感染防御)また不利にも(二次的肺損傷の増悪)作用することを示すことができた。
|