研究概要 |
気管支喘息は、慢性の気道炎症と気道の過敏性を特徴とする可逆性の閉塞性呼吸器疾患である。近年、喘息の有症率は増加しており、その原因の1つとして大気汚染も考慮されているが、どのようなメカニズムで関与しているかについては、十分に検討されていない。そこで本研究は、平成6年度から2年間にわたり、我々の確立したマウスの気道反応性を評価する実験系により、大気汚染物質という生理的に存在する刺激がどのような機構で気道過敏性を惹起するかをマスト細胞やリンパ球などの細胞とGM-CSF, IL-6, IL-8などのサイトカインの両面から検討した。我々の研究は、最終的には大気汚染に限定されない普遍的な喘息の発症機構の解明を目的としているが、大気汚染物質という生理的に存在する刺激を用いた研究のこれまでの2年間の成果は、以下のようになる。 1)先天的にAchに過敏なA/Jマウスと同様に、先天的に過敏でない純系マウス(Balb/cとC57B1/6)についても、大気ガス汚染物質No_2の液化物質である硝酸や浮遊粒子状物質のディーゼル排気微粒子(DEP)の経気道投与により気道反応性が亢進することを観察した。 2)C57B1/6と同じH-2^bマスト細胞が欠損するW/W^vマウスでは、大気汚染物質による気道反応性の亢進が抑制されるが完全ではなく、マスト細胞への依存は部分的である。 3)A/Jマウスによるサイトカインの検討では、GM/CSFに対する中和抗体の経気道的投与により、大気汚染物質による気道過敏性の亢進が完全に抑制され、GM/CSFが中心的な役割を演じていることが、示唆された。また、大気汚染物質への暴露により、肺においてGM/CSFのmRNAの発現が増強することが明らかとなった。 今後さらに、リンパ球およびIL-6、IL-8などのサイトカインの関与についても、検討を加える予定である。
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