研究課題
1.ヒト肺癌高転移株の樹立ヒト非小細胞肺癌株PC9をヌードマウスの尾静脈より静注し、形成された肺転移巣を無菌的に取り出し、再び培養に戻す操作を繰り返し、現在8代(PC9/F8)まで継代が進み、親株の転移率が10〜20%に対し、PC9/F8は40〜50%の転移率を有するようになった。今後さらに継代を進め、より転移率の高い株を樹立する予定である。2.転移に関わる因子についての検討(1)Attachment assayin vivoにおいてもPC9/F8は親株に比し、著明な再構成基底膜(マトリジェル)への接着能の亢進が認められた。さらにその主要な構成成分であるラミニン、タイプIVコラーゲン、フイブロネクチンへの接着能について検討したところ、ラミニンとタイプIVコラーゲンへの接着能の亢進が認められた。よって癌の高転移性に関与する因子として、VLA2などのインテグリンの癌細胞における過剰発現が推測され、インテグリンの発現についてフローサイトメトリーを用い検討する予定である。(2)invasion assayin vivoにおいてPC9/F8は親株に比し、著明な浸潤能の亢進が認められた。しかし、boyden chamberを用いた浸潤能には、接着能、マトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)などによる基質溶解能、運動能が影響すると考えられているので、接着能以外の因子の関与を確かめるために、ザイモグラムによるMMP2とMMP9の検討や、Chemotaxis assayを現在行っている。