研究課題/領域番号 |
06670634
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
松本 明 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90027318)
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研究分担者 |
別所 敞子 川崎医科大学, 医学部, 助手 (10104811)
山田 作夫 川崎医科大学, 医学部, 講師 (00122458)
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キーワード | クラミジア・ニューモニエ / 熱ショック蛋白 / 病原因子 / 過敏症反応 / 感作マウス |
研究概要 |
Chlamydia trachomatis(以下Ct)やC.psittaci(以下Cps)による感染発症はこれらのクラミジアが産生する60KDa熱ショック蛋白(以下HSP)が関与する過敏症反応であることが証明されている。この背景に基づいて本研究ではC.pneumoniae(以下Cpn)の発症因子の解析を以下の手順で行った。(1)Cpn60KDa HSPに対する単クローン抗体(以下MAb)を作製、(2)Cpn60KDaの遺伝子の解析、(3)Cpn感作マウスに60KDa抽出抗原の静注による炎症惹起の有無の解析。 得られた多くのMAbをイムノブロット法でみた結果、70KDa(リボソームS1)、60KDa、53KDa(Cpn特異的)に対するMAbであったが、多くの抗60KDa-MAbは、cpu単独CpnとCtの2種、CpnとCpsの2種、CpnとCt及びCps3種と反応する4群に分けられ、Cpn60KDa蛋白が種、亜属、属特異的エピトープを含むことが判明した。さらにλgt11を用いてCpn遺伝子ライブラリーから60KDa Madを用いたプラック免疫スクリーニングによって得た60KDa蛋白遺伝子の塩基配列を調べた結果、既報のCpn60KDa HSP遺伝子と一致した。従って得られたMAbは60KDa HSPに対するものであり、60KDa MAbは種、亜属、属特異的エピトープを有すると結論された。Cpnは30℃で旺盛に増殖するが、60KDa HSPの合成は37℃での合成より低いことも今回確認された。Triton X-100によるCt60KDa HSPの抽出法を応用して得た60KDa HSP分画を、経気道的Cpn感作マウス(異常なし)に尾静脈から静注し、経日的に病理組織学的に検討した結果、静注2日目から全肺野の気管支、血管周囲、一部の肺胞壁に著明な炎症が認められた。この結果はCpnによる感染症がCtやCps感染症同様、過敏症反応によって惹起され、これに60KDa HSPが関与することを示唆している。HSPの抗原性とCpnの浸淫度(健常成人の約60%は抗体陽性)を考慮すればCpnの反復感染のみならず、他種クラミジアの重複感染によってより強い炎症発現につながるのかもしれない。しかし今回用いた抽出60KDaの分画中には分子量の異なる数種の蛋白も含まれており、Cpn感染発症が真に60KDa HSPのみが関与するのかどうか更なる検討を要し、現在検討を続行中である。
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