研究概要 |
申請者らはCD11b+T細胞,CD28+T細胞は臓器特異的分布することを明らかにした(J.lmmunol.,151,2237-2246,1993)。この研究の過程に、肺サルコイドーシス患者の肺胞洗浄液(BALF)中のT細胞は膜表面抗原CD3,CD11b,CD28抗原が著明に減少している事を見いだした。この膜表現型のT細胞は同一患者または正常人の末梢血に存在せず、その上このBALF中のT細胞はmRNAレベルでT helper typel(Thl)タイプのサイトカインを主体に強く発現していた。また、患者の末梢血、BALF、眼房水から樹立したCD4+T細胞クローンはIL-4以外のサイトカイン(IL-1α,IL-2,IL-6,IL-10,TNF-α,IFN-γ)を多量に産生しており、これらのT細胞がサルコイドーシスの病因と関与していることが示唆された(主論文投稿中)。これらの研究成果にもとずき"サルコイドーシス症に特有の抗原刺激が病変部T細胞の異常増殖を誘導し結節形成を引き起こす"との作業仮説をたてた。具体的に今年度は以下のことを行った。 (1)全身性に病変部を形成したサルコイドーシス患者より眼房水,BALFを採取し、これらよりT細胞クローンを樹立した。(2)肺サルコイドーシス患者のBALFより肺胞マクロファージを新鮮分離し、新鮮分離した患者肺胞マクロファージ上の抗原をacid solutionにて分離した。これを分子量、HPLCにて分画した。(3)多数のサルコイドーシス患者末梢血よりEBV-transformed B cellを樹立した。 来年度は、これらT細胞クローンとautoまたはalloの肺胞マクロファージとの反応を検討する。即ち、混合培養上清中のサイトカイン及びT細胞のDNA合成を測定する。これら病変部T細胞が特定の抗原を認識しているならばCD4+T細胞はIFN-γ,TNF-α,IL-2等のサイトカインを産生し、DNA合成も増加するはずである。acid solutionにて分離した患者肺胞マクロファージ上の抗原(ペプチド)を、このシステムを用いて病変部T細胞が認識している抗原の同定を目標とする。
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