研究概要 |
severe combined immunodeficiency(SCID)miceは成熟したTおよびB細胞がなく中枢神経系でのサイトカインネットワークを研究するためには良いシステムである.私どもはサイトカインのみで中枢神経系の脱髄が生じうるという仮説のもとに本研究を行った.SCIDマウスよりアストロサイトを分離しそれにIL-1β,IL-6,TNF-α,IL-2のcDNAを導入しneomysin抵抗性の株を選択した.それぞれのサイトカインの発現はRT/PCRにて確認し,蛋白レベルの発現はELIZAと感受性細胞のバイオアッセ-を行った.それらの細胞を単独および種々の組み合わせでSCIDマウスの脳内に移入し,2週間後にマウスを屠殺し神経病理学的に検討した.その他ヒトIL-2とマウスinterferon-γ(INF-γ)のリコンビナントを脳内に注射し,同様の実験を行った.コントロールにはそれぞれのリコンビナントを加熱により不活化したものを用いた.単独で上記アストロサイトのトランスフェクタントを移入した場合,IL-2のトランスフェクタントでのみ壊死と脱髄が高頻度に観察された.これら病変は細胞移入部からかなり離れた白質にもみられた.その他のサイトカイントランスフェクタント単独および組み合わせでは刺入部の変化以外は病変を認めなかった.IL-2のリコンビナントをSCIDマウスの白質に注射した場合もIL-2トランスフェクタントの場合と同様の結果を得た.INF-γのリコンビナントの場合は白質に限局したvacuolation(脱髄)が高頻度に観察された.IL-2やINF-γはSCIDマウスのNK細胞を活性化する.活性化されたNK細胞は再びINF-γを放出しグリア細胞からTNF-αやinducible NO synthase(iNOS)を誘導しオリゴデンドロサイトに障害を与えると考えられる.
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