研究概要 |
家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)大家系について検討し、以下の成果を得た。 1.本家系患者SOD1遺伝子異常 患者血液からDNAを抽出してSOD1遺伝子について検討し、SOD1遺伝子エクソン5に2塩基の欠失を認めた。この遺伝子異常はきわめて珍しく、国際的にも権威ある外国雑誌に発表した(Hum Mol Genet)。さらに、以前剖検された症例についても、剖検脳のパラフィンブロックからDNAを抽出して同様なDNA異常を認めた。 なおこれまでに検討した弧発性ALS例ではSOD1遺伝子に異常を認めていない。 2.家系解析 1)遺伝子異常:本家系構成員においてSOD1遺伝子異常について検討し、本遺伝子異常が本疾患と関連するものと考えられた。この成果は、国際的にも権威ある外国雑誌に近々刊行される予定である(Neurology,in press)。 なお、臨床的に健常であるが遺伝子異常を有する者5例を発見し、経過観察を行っている。 2)SOD1活性:赤血球SOD1活性は、患者が正常対照の40%と著明に活性が低下し、遺伝子異常を有するが発病していない者では正常対照の約60〜70%と中等度に低下していた。遺伝子異常を有さない者は正常であった。この結果は、外国雑誌に近々掲載される予定である(Neurology,in press)。 なお、弧発性ALSにおいては、SOD1活性は正常であった。 3.病理解剖:経過観察を行っていた本家系患者が死亡され、病理解剖を行う機会を得た。本症例は発症後11年であり、本疾患としては経過の非常に長い症例であった。神経病理学的には運動神経のみならず広範な変性を示し、多系統の変性を示唆した。本症例は家族性ALSの疾患としての位置づけに関し、貴重な示唆を与えるものと考えられた。これらの所見は近々発表予定である(第36回日本神経病理学会総会、1995年アメリカ神経病理学会総会)。
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