佐賀医科大学付属病院に入院した脳血栓、脳塞栓、脳出血、クモ膜下出血、一過性脳虚血発作患者につき、私達が作成した脳ミオシンに対するモノクロナル抗体を用いた酵素抗体法により、血中脳ミオシンを経時的に測定したところ、脳血栓および脳塞栓患者において、発症5日目から7日目にかけて上昇がみられた。しかし測定感度は充分でなく、臨床経過および頭部CTスキャンより脳血栓と考えられる例でも血中脳ミオシンが有意の変化を示さないこともあった.さらに、健常人の血清脳ミオシン濃度も測定してみると、なかに異常高値を示すものが認められた。これは、健常人の血中に脳ミオシン抗体と交差反応を示す物質が存在することを示唆している。この測定系に用いた抗体の特異性がそれほど高くなく、他の組織由来のミオシンと反応することが考えられるが、少なくとも心筋ミオシンとは反応しなかった。この測定系に用いられている抗体はいずれもマウス抗体であり、坑マウス抗体を含む検体で高値となることも考えられるため、この影響について検討した。検体をマウス血清で処理することにより、脳血栓患者においてのみ血清ミオシン濃度の上昇が認められ、測定値は脳損傷の程度を反映していることが考えられた。今回、共存物質による影響を受けなかったと仮定すれば、健常人における血清脳ミオシン濃度は20ng/ml以下であると考えられた。 他方、脳梗塞シンチグラムを開発するために、脳梗塞家兎の作成を試みた。家兎の頸動脈を結紮することにより脳梗塞を発症させるのだが、一側のみの結紮では脳梗塞は発症せず、両側結紮すると家兎は死亡することが夛い。一側を結紮し、他側を狭窄させるのだが、いまだに安全かつ確実に家兎に脳梗塞を発症させるのに困難を感じている。
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