1.TNF-αのミエリン形成への効果:マウス小脳組織片をcollagen-coated 24-wellの培養プレート上に培養し、培養開始時から1x10〜1x10^4U/mlの濃度のTNF-αの入った培養液で培養した。定期的にミエリン形成を観察して、18/20日目に最終的なミエリン形成率とミエリンの完成度を定量的に評価した。その結果、1x10〜1x10^2U/mlの濃度以上で強いミエリン形成の抑制がみられた。しかしプルキンエ細胞の発達には影響はなかった。一方、すでにミエリン形成した成熟した培養組織にTNF-αを投与したが、1X10^4U/mlの高濃度でもミエリンへの直接的な傷害作用はみられなかった。これらの結果よりTNFは脱髄に直接関わっているというよりも、むしろ脱髄前後に集積するastrocyやmacrophageから産生されるTNFが髄鞘の再形成を阻害している可能性が明かとなった。 In vitroにおけるastrogliosisの作成:新生仔ICRマウスの脳よりMcCarthyらの方法によりastrocyteを精製し、75cm^2の培養フラスコに培養した。astrocyteがmonolayerに増殖した時点でトリプシン/EDTAで細胞を分散し、24-well培養プレートに移し培養を続けた。細胞数は5週目で約3倍に増殖したが、その後減少し、8週以降は約1.5倍の細胞数を維持した。形態学的には培養週齢の増加と共にastrocyteはfibrousでhypertrophicとなり、抗GFAP抗体で強く染色されるようになった。これらの所見はastrocyteを継代せずに培養を長期間、ことに8週以上続けるとastrogliosisに酷似した変化をきたすことを示している。このようにastrogliosisに至った培養astrocyte上に小脳組織を培養し、astrogliosisの脳組織に及ぼす影響、ことにミエリン形成への影響を調べる。
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