研究概要 |
視覚系の刺激による誘発反応には,網膜の光受容体や神経節細胞の興奮による網膜電図(ERG),ブロードマン17・18野の興奮による視覚大脳誘発電位(VEP),図形の認知に関連する事象関連電位(ERP)の3つがある。これらERG,VEP,ERPを駆使した検査システムを多モダリティーVEP(Multi-modality Visual Evoked Potentids)と定義する。平成6年度は,図形刺激を用いたオド・ボール課題と対刺激課題に対して,頭皮上からVEPとERPを測定する方法を研究した。課題の呈示プログラムはコンピューターで制御し,図形は電子タキストスコープ上に出すことにした(岩崎通信タキスト使用)。VEPは正中後頭部から記録し,N100が測定しやすいピークであった。ERPはCz,Pz(基準電極は両耳朶連結)から記録し,N200とP300が測定しやすいピークであった。眼周囲に置いた電極から眼球運動をモニターし,その電位(EOG)が±100μVを越えた時には自動的に加算を中断(アーチファクトの自動リジェクト)するようにセットした。測定パラメーターとしては潜時(N100,N200,P300,N200-N100,P300-N100)と振幅(基線-N200,基線-P300,N200-P300)を選んだ。N200/P300とN100の潜時差はERPとVEPの潜時差であり、皮質レベルの視覚情報処理速度を表すパラメーターと考えられる。正常人におけるERPは潜時・振幅ともに加齢の影響を受けた。70歳を越える正常例では低振幅ながら明らかなピークを有する反応波形が得られ,臨床応用に期待がもたれた。もし,角膜電極やゴールドフォイル電極を用いて,上記の図形刺激に対するERGが測定できれば,ERG-VEP-ERPを同時に測定できる検査となるが,ERGの検出はむずかしく,今後に残された課題である。平成7年度は上記の検査システムを臨床例に応用していきたいと考えている。
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