研究概要 |
視覚系の刺激による誘発反応には,網膜の光受容体や神経節細胞の興奮による網膜電図(ERG),ブロードマン17・18野の興奮による視覚性大脳誘発電位(VEP)、図形や文字の認知に関連する事象関連電位(ERP)の3つがある。これらERG,VEP,ERPを駆使した検査システムを多モダリティー視覚誘発電位と定義する。平成6年度から7年度にかけて、以下の3つの内容について研究成果をあげた。(1)Gmzteld型フラッシュERGの正常波形ならびに糖尿病性網膜症への応用:暗順応下におけるERG(rod細胞の反応)と明順応下のERG(cone細胞の反応)をゴールドフォイル型電極を用いて記録した。正常波形の潜時と振幅を定量化した上で,糖尿病性網膜症における異常波形の特徴を明らかにした。(2)パターンリバーサルERG・VEPの正常波形ならびに臨床応用:多数の正常例で記録したERG・VEPの潜時・振幅と年齢との相関を明らかにするため、40歳未満の群と40歳以上の群に分けて一次相関を検定した。その結果,ERG振幅,ERGとVEPの潜時について40歳以上で加齢の影響を示唆する相関が認められた。(3)図形による視覚性事象関連電位の正常波形と臨床応用:図形刺激によるオド・ボール課題と対刺激課題に対して,頭皮上からVEP(正中後頭部電極)とERP(CZ,PZ電極)を同時測定する方法を確立した。正常対照例ではCZ,PZ,よりN200,P300を主要成分とするERPが記録され,OZからはN100,P100を主要成分とするhrimaryVEPが記録された。パーキンソン病,脊髄小脳変形症,アルツハイマー病,脳血管障害など各種中枢神経疾患に上記方法を応用したところ,パーキンソン病やアルツハイマー病でN200,P300の振幅低下や潜時延長が認められ、認知機能障害を客観的に示唆する所見と考えられた。
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