研究概要 |
目的)アポリポ蛋白E(apoE)-ε4allele(ε4)はアルツハイマー病(AD)の危険因子である。ADの約65%はε4(+)型、約35%はε4(-)型であるが、ε4(-)型の発症を説明する他の遺伝環境因子が求められている。apoEの脂質結合部位はAβとも結合するため血清脂質が低いかapoE濃度が高い場合にはapoE-Aβ複合体の量が増加し、エンドゾームなどで処理しきれない可能性がある。この点を確かめるためADの血清脂質およびアポリポ蛋白(apoAI,AII,B,CII,CIII,E)濃度を測定し、apoE遺伝子型との相関を検討した。 対象)AD45例(ε4(+)型:29例、ε4(-)型:16例)。対照79例(ε4(+)型:12例、ε4(-)型:67例)。 結果)1.ADではε4(+)型、ε4(-)型に関係なくapoAI,AII濃度が有意に低下していたが、apoE濃度に変化はなくまたapoE遺伝子型とも相関しなかった。 2.血清脂質(総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)のうちHDLコレステロールのみAD全体で低下傾向にあったがやはりapoE遺伝子型とは相関しなかった。 考察)1.ε4(-)型ADの危険因子をapoE濃度や脂質濃度に求めることは出来ないと考えられる。2.apoE遺伝子型に関係なくADでapoAI濃度が有意に低下している点は興味深く、apoAIには神経修復作用があることを考慮にいれるとapoAIの低下はapoE-ε4とは独立したADの危険因子である可能性がある。
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