研究概要 |
はじめに:本研究ではNitric Oxide(NO)自動調節への関与の有無を明らかにする。その第一歩として脳自動調節に関与する頚部交感神経節からの脳血管支配とNOとの相互作用を検討した。一方、化学的調節機序はL-NAME投与で障害されたとする報告も多い。そこでL-NAME投与時のCO2反応性についても検討した。 方法:実験にはネコを使用し、麻酔後呼吸は調節呼吸とした。頭窓法とビデオカメラ法でネコ脳表の血管口径を連続記録した。一部の症例では脳血液含量(CBV)を連続記録した。 結果:1、交感神経系とNOについて:上頚部交感神経節(SCG)を露出し電気刺激(8V,10Hzで3分間)して脳表血管口径を収縮。1)コントロール群(6匹):SCG刺激を30分間隔で2回行った。2)L-NMMA脳表潅流群(8匹):第二回目刺激の10分前よりL-NMMA(10-3M)を脳表潅流しながら第二回目のSCG刺激を行いコントロール群と比較した。L-NMMA脳表潅流群では、第二回刺激開始3分で有意(p<0.05)な収縮を認めたが、第1回ならびにコントロール群と比較して収縮反応に有意差を認めなかった。2、炭酸ガス反応性とNO:10%CO2を3分間吸入によるCO2反応性をL-NAME(3mg/Kg/min)60分股静脈に連続注入して開始15分、60分でCO2反応性を検討した。CO2反応性(血管の拡張率%/CO2の上昇率 mmHg)は、15分までは保たれていた。60分では一部障害されていたがいずれも動脈がすでに拡張しておりNO抑制以外の作用があると考えられた。これを除けば、CO2による血管拡張、CBV上昇ともに障害されていなかった. まとめ:今回の検討では、脳表血管外膜側からのL-NMMA投与でNitric Oxide生成を抑制しても、猫上頚部交感神経節刺激による収縮反応は影響を受けなかった。またL-NAME投与によっても脳血管のCO2反応性は障害されていない。今後は脱血,血液再注入による血圧変動時の自動調節にNOが関与しているかの検討を進める。
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