研究概要 |
1.指の随意運動に先行する緩徐な陰性電位(Readiness Potential,RP)が実際の運動を伴わない、運動の想起によっても出現するかを9名の正常人で検討した。そのために、(1)随意的に指を曲げたとき、(2)音を合図に指を曲げたとき、(3)音を合図に運動を想起したとき、(4)音を聞くだけのときの脳波を筋電図または音の開始点をトリガーに、平均加算し比較した。その結果、RPの頭皮上の分布、開始点、最大振幅は運動想起の際も随意運動とほぼ同様であり、Cz、指と対側の中心・頭頂部で大きな振幅で出現した。 2.脳梗塞または脳出血で一側の大脳の一ヶ所に障害を来し、片麻痺となった患者のRPを検討した。指が動かないときは音を合図に動かす努力をさせ、音の開始点をトリガーに脳波を加算平均した。その結果、RPの出現様式は症例により種々で、麻痺指を動かすときに正常指を動かすときよりも対側の頭皮上でRPの振幅が大きくなる例、対側よりも同側の頭皮上でRPの振幅がより大きくなる例などが見られた。解析した症例数はまだ少ないが、症例により運動の戦略が異なること、対側、同側の大脳が活性化されることが示唆された。
|