炎症性脱髄性多発神経炎における自己免疫学的側面を検討するため、まず、末梢血単核球の活性化マーカーであるMHC classII陽性T細胞の割合を測定した。急性炎症性脱髄性多発神経炎例の中には高値を示すものも認められたが、正常対照群に比し推計学的な有意差は認めなかった。しかし、自己の末梢神経ミエリン抗原の一つであるガングリオシド抗体を炎症性脱髄性多発神経炎例(ギランバレー症候群を含む急性炎症性脱髄性多発神経炎23例、慢性炎症性脱髄性多発神経炎8例)で検索したが、約45%の患者で抗ガングリオシド抗体が陽性であった。特に急性炎症性脱髄性多発神経炎に限ると61%で何らかの抗ガングリオシド抗体が陽性を示した。また、実際の脱髄巣で種々の免疫活性を有し脱髄に関与していると考えられるTNF-αを測定したが、高値を示す例が多く免疫学的な亢進状態が示唆された。さらに抗ガングリオシド抗体は、臨床症状と密接な変動を示し、この測定は治療経過を追跡するうえで非常に優れたマーカーとなりえると考えられた。同時に、この結果は炎症性脱髄性多発神経炎でミエリン抗原に対するT細胞の存在を強く示唆した。次に細胞性免疫能の評価をするために末梢神経粗製抗原、及び精製ガングリオシドの一つであるGM1に反応するT細胞株の確立を試みたが、まだ少数例の検討であり現時点では明らかな自己末梢神経ミエリン反応性T細胞株の確立はできなかった。次年度は検索する対象を増し、さらにミエリン抗原蛋白の合成ペプチドを作成し炎症性脱髄性多発神経炎における自己反応性T細胞の意義について検討する予定である。
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