[はじめに]急性炎症性脱髄性多発神経炎(AIDP)は高頻度に末梢ミエリン糖脂質に対する抗体の増加をみとめ、自己抗体を含む液性因子の関与が強く示唆されている。しかし、これまで細胞性免役能に言及した報告はほとんどない。本研究では炎症性脱髄性多発神経炎の細胞性免役能の解明のため、アレルギー性実験性末梢神経炎(EAN)を惹起しうるP0、P2蛋白に対するヒトT細胞の反応性について検討した。[方法]抗体産生やEANを惹起しうるP0 56-71、P0 180-199、P2 59-78の合成ペプチドを抗原として短期T細胞クローニング法でヒト末梢血から末梢ミエリン抗原特異的T細胞株の確立を試みた。[結果]コントロール 5例ではこれらの抗原に対するT細胞株の頻度はそれぞれ0.59±0.81、1.53±0.53、0.11±0.24×10^<-7>であった。しかし、特定のMHCと末梢ミエリン抗原特異的T細胞の頻度と有意な相関はみとめられなかった。炎症性脱髄性多発神経炎5例(AIDP急性期1例、慢性期3例、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)1例)について同様の検討を実施したが、AIDP急性期例ではP0180-199特異的T細胞の頻度は3.5×10^<-7>とコントロールの約2倍の高値を示した。一方、慢性期、3例ではP0 180-199特異的T細胞の頻度はコントロールと同程度であった。CIDP例ではP0 56-71、P0 180-199、P2 59-78の各抗原ペプチドに対する頻度はそれぞれ1.5、1.0、0.5×10^<-7>とP0 56-71に対してやや頻度が高かった。[結語]末梢ミエリン抗原特異的T細胞はヒトにおいてもみとめられた。特にP0 180-199に対するT細胞株は各対象から得られ、ヒトにおいてもT細胞抗原特異部位の一つである可能性が示唆された。今後、さらに各疾患における検討が必要である。
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