研究概要 |
ヒポカルシンは,我々が見い出した海馬円錐体細胞に特徴的に分布するカルシウム結合蛋白質で,情報伝達の効率を調節していると考えられている.そこで,ヒト・ヒポカルシン遺伝子を単離し,構造解析を行うとともに染色体座を決定し,遺伝性精神神経疾患にともなう記憶障害との関連を追求することを目的とした.また併せて,類似蛋白質についても検討することを目的とした. ヒト・ヒポカルシンcDNAをプローブとしてヒト・染色体遺伝子ライブラリーをスクリーニングし,全翻訳領域を含む2個のクローンを得た.転写開始点はプライマー・エクステンション法により翻訳開始点上流181塩基であることを明かとした.翻訳終止点の下流760塩基にpolyA付加共通配列を認め,この部位が転写終止点であると考えられた.ヒト・ヒポカルシン遺伝子は3つのエクソンからなり,約15キロ塩基にわたって存在していた.転写開始点上流約2キロ塩基の中には,一般的な転写調節に関与するTATA,GC,CAATボックスなどの配列は認めなかった.また,第1エクソンは転写開始点から第2EFハンドの終まで,第2エクソンは第3EFハンドのアミノ末端側半分を,第3エクソンは第3EFハンドのカルボキシ末端側半分から転写終止点までを含んでいた.ヒト・ヒポカルシン遺伝子座をプfluorescense in situ hybridization法により解析したところ,第1染色体p34.2-35であることがしめされた. ヒト・HLP2遺伝子の存在する染色体をヒト・ハムスター雑種細胞株DNAを用いてConcordance/Discordance解析し,第2染色体であることを明かとした. cDNAクローニングの条件を緩やかにして,ラット・ヒポカルシンcDNAをプローブとして類似蛋白質のヒト・cDNAクローニングを行った.全翻訳領域を含む独立した3種類のcDNAクローンが得られ,ヒト・HLP3〜5と命名した.ゲノム遺伝子のクローニングや遺伝子座の解析を現在行っている.
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