研究概要 |
ヒポカルシンは,海馬錯体細胞に特徴的に分布するカルシウム結合蛋白質で,情報伝達の効率を調節していると考えられている.そこで,ヒト・ヒポカルシン遺伝子を単離し,構造解析を行うとともに染色体座を決定し,遺伝性精神神経疾患にともなう記憶障害との関連を追求することを目的とした.ラット・ヒポカルシンcDNAをプローブとして,ヒト・脳cDNAライブラリーをスクリーニングし,全翻訳領域を含むヒト・ヒポカルシンcDNAを得た.ヒト・ハムスター雑種体細胞株DNAを用いてConcordance/Discordance解析を行い,ヒト・ヒポカルシン遺伝子が第1染色体に存在することを明かとした.ヒト・ヒポカルシンcDNAをプローブとしてヒト染色体遺伝子ライブラリーをスクリーニングし,ヒポカルシン遺伝子を得た.ヒト・ヒポカルシン遺伝子は3つのエクソンからなり,約15キロ塩基にわたって存在していた.第1エクソンは転写開始点から第2EFハンドの終まで,第2エクソンは第3EFハンドのアミノ末端側半分を,第3エクソンは第3EFハンドのカルボキシ末端側半分から転写終止点までを含んでいた.fluorescence in situ hybridization (FISH)を行い,第1染色体p34.2-35の領域にヒポカルシン遺伝子座があることを明かとした.cDNAクローニングの条件を緩やかにして,類似蛋白質のヒト・cDNAのクローニングを行い,全翻訳領域を含む独立した4種類のcDNAクローンを得,ヒト・HLP2〜4と命名した.ヒト・HLP2はヒト・ヒポカルシンとは翻訳領域の塩基配列で90%,アミノ酸配列で94%の相同性を示した.Concordance/Discordance解析を行い,ヒト・HLP2遺伝子が第2染色体に存在することを明かとした.現在,ヒト・HLP2遺伝子のクローニング,FISHによる染色体座の解析を進めている.今後,他のクローンについても解析を進め,ファミリー蛋白質全体の遺伝子の解析を行う予定である.
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