研究課題
一般研究(C)
本研究の主旨は"孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の成因がカルシウム チャネル(VGCC)に対する抗体産生を契機としてCa2+細胞内情報伝達系を介した炎症反応を伴なわない能動的神経細胞死"apoptosis"をきたす"という著者らの仮説に基づいて行われたものである。著者らは孤発性ALS(sALS)の13例中9例にL型カルシウム チャンネル(VGCC)α1 subunitに対する特異自己抗体を認め、細胞膜内部に位置するβsubunitに対する抗体は認められず筋崩壊に伴う二次的産物ではないと推測した。他の神経筋疾患25例(CIDP、GBS、SPMA、MG)健常者11例にはこの抗体の存在は認められずLambert-Eaton症候群ではα1subunitに加えβsubunitにも抗体を認めた。また、sALSIgGが人工脂質二重膜再構成系の電気生理学的実験においてCa電流を変化させることを認めた。その後、sALSIgGがL型VGCCのみならず、神経筋接合部に多いP型VGCCのCa currentを増加させることやN型VGCCを有する培養前角細胞株(VSC4.1)に対してapoptotic processによる細胞障害性を示すことが報告された。著者らはsALS新鮮生検筋組織を用いてL型VGCC binding assayを行い、正常筋組織に比べてdihydropridineリガンドである(3H)PN200/110のKd低下(親和性亢進)を認めた。この変化はsALS疾患特異的ではないが、脊髄性進行性筋萎縮症などでは認められなかった。Bmaxについては脱神経の程度に比例して増加した。このデータは正常ヒト筋組織のL型VGCCのbinding assayの基礎データとしても重要と考えられる。さらに、正常筋組織を用いてALSIgG添加によるVGCCのligand bindingへの影響について検討した結果、Bmaxの低下を認めた。以上のデータはALSIgGが生体内VGCCの構造変化を来すと共に、細胞内Ca濃度を変化させることが推測される.自己免疫性神経疾患としてCampylobacter jujeni(Cj)感染後Guillain-Barre症候群に関する抗GM1抗体、抗Cj抗体の経時的検討を行った。我々の目的は、C.Jejuni便培養陽性GBS2症例の抗C.jejuni抗体・抗GM1抗体を一年以上に渡り経時的に観察した結果、IgA-Cj抗体価が神経症状発症後1ヶ月以内という比較的早期に正常化しIgM-Cj抗体価は3ヶ月以内に正常化を示したが、IgG-Cj抗体価は1年以上に渡り高値を示した。抗C.jejuni抗体と抗GM1抗体は平行して変動を示したが、抗GM1抗体の抗体価と重症度とは関連性を示さなかった。
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