筋萎縮性側索硬化症(ALS)の下位運動ニューロンは、幾種類かの封入体が出現する。そのうち、ユビキチン化されているのは、skein-like inclusion(SLI)とhyaline inclusion[別名round inclusion(RI)]である。ユビキチンはcytosol内で不要になったり変性したりした蛋白を可溶性のアミノ酸にまで分解する際に必要な蛋白である。したがって、ある構造がユビキチン化して可視化されるということは、この分解機構が途中で頓挫したことを意味している。SLIやRIもユビキチン化していることから、この両者においてもユビキチン系による分解が頓挫したものと考えられるが、その後の運命については分かっていない。 我々は、臨床病理学的にALSと診断された20例以上の脊髄前角大型ニューロンを電子顕微鏡にて観察、SLIとRIを含むニューロンをそれぞれ5-6個同定した。SLIは約15mmの太さの異常な線維の束で、限界膜を有さずsytosolに露出していたが、flat cistemにより様々な程度に取り囲まれているSLIがしばしば観察された。このcisternはautolysosomeと考えられている顆粒空胞変性の初期に見られるprimary lysosomeと酷似していた。一方、RIは神経細糸、SLI構成線維と類似の線維、様々に集簇した小顆粒から成っており、程度は様々であるが、その周囲にのみflat cisternあるいはautolysosome類似の構造が集まっていた。 以上の所見は、ALS下位運動ニューロンのユビキチン化された封入体が少なくとも一部は最終的にはlysosome系で処理されていく可能性を示すものである。
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