脊椎動物の胸腺には骨格筋に類似した筋様細胞が存在する。この細胞の生物学的意義に関しては不明な点が多かった。一方、自己免疫病である重症筋無力症は胸腺の摘出で寛解することから、筋に対する抗体産生が胸腺内で限局して起っており、筋様細胞の生理的、免疫的異常が原因であると想定し、これをクローン化した。クローン化筋様細胞はIL-1a、IL-6、IL-7、未同定のリンパ系細胞増殖因子等を産生していた。さらに本細胞は二種の60-80kDaと100kDaのモノサイト・ミクログリア系細胞の分化増殖因子を産生していた。これらの因子は既存のM-CSFやGM-CSF等のサイトカインとは異なる生物学的作用を示すばかりでなく、アミノ酸配列においても既存のサイトカインとは全く異なる配列を示す因子であった。100kDa因子はマトリックス分子として知られるビグリカンにホモロジーがあった。この分子の活性はコア分子によって担われており、グリコサミノグリカン鎖は保護分子として作用している可能性が判明した。一方、60^〜80kDa因子は他の蛋白とのホモロジーはなく新規物質とみなされた。本因子遺伝子のクローニングは困難で、現在1kbまで伸長している。60^〜80kDa、100kDa因子ともM-CSFやGM-CSF等と組合わさることで、モノサイト・ミクログリア系細胞にヘテロジェニティを誘導すると考えれる。両因子のリコンビナント製品の開発とその詳細な作用機作の解明を進行中である。
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