研究概要 |
1.本研究の対象であるラットにおいて、インスリン依存性糖尿病動物,インスリン治療動物、アミノグアニジン治療動物を確立した。 2.上記の動物群において、 (1)腸間膜動脈平滑筋の内皮依存性過分極反応を比較検討し、インスリン治療群においては、糖尿病モデル非治療群で認められる腸間膜動脈平滑筋のアセチルコリンに対する低下が有意に是正され、ほぼ正常対照群と同等にまで回復することを確認できた。アミノグアニジン治療群では反応低下は是正されなかった。 (2)心臓内微細血管構造を検索したところ、インスリン依存性糖尿病群で認められた微細血管の乱れが、インスリン治療群では是正された。しかるにアミノグアニジン治療群では是正が認められなかった。また糖尿病における心臓内微細血管の変化は、心筋組織のplasminogen activator inhibitor(PAI-1)活性と逆相関し、さらにpalsminogen activator(PA)の発現を抑制するとされる薬剤の慢性投与により変化が抑えられた。 (3)心臓β交感神経刺激依存性心室筋陽性変力作用の低下、および心筋細胞膜のβ受容体数の減少は、アミノグアニジン治療により是正されなかった。 (4)糖尿病状態作製後8週間の糖尿病心において、ブラジキニンによる内皮依存性過分極依存性の抵抗血管拡張反応は傷害されていなかった。 3.以上より、アミノグアニジンは糖尿病性心血管機能障害の改善を惹起しないことが確認され、advanced glycosylation endproductは本傷害に寄与していないことが推定された。しかし、本研究過程で、糖尿病における心臓内微細血管構造の変化とその機序、さらにその治療法についての解明が進んだ。
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