研究課題/領域番号 |
06670686
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
三國谷 淳 弘前大学, 医学部, 講師 (60133881)
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研究分担者 |
小野寺 庚午 弘前大学, 医学部, 教授 (70003473)
藤野 安弘 弘前大学, 医学部, 助手 (50229027)
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キーワード | 冠微小循環 / 心筋虚血 / 内皮障害 / 酸化LDL / 運動負荷 / coronary steal / ACE阻害薬 |
研究概要 |
ヒト冠微小血管障害の病因・病態生理の解明を目的として、狭心痛や心電図ST低下所見を示すが冠状動脈造影像で器質的および機能的狭窄所見が認められない患者(SX)の(1)局所心筋血流動態、(2)冠血管内皮細胞由来弛緩能、(3)脂質代謝について検討した。また、SXの(4)薬剤治療効果についても検討した。(1)局所心筋血流動態:ジピリダモ-ル(DPM)投与前後でsonicated albumin(<12μm)を冠状動脈内に投与し、その時の心筋コントラストエコー像を心断層超音波法あるいは血管内超音波法で観察した。DPMで虚血発作が誘発されたSX症例では、非発作時に比べて、発作時には心内膜側のまだらなコントラストエコー像が特徴的であった。coronary steal現象を支持するエコー所見と考えられた。(2)冠血管内皮細胞由来弛緩能:アセチルコリン(ACh)投与時の冠導管血管径変化はSX群と対照群で有意差なかったが、冠血流変化は対照群に比してSX群で有意に小であった。冠血流変化が導管血管のみならず抵抗血管の反応を反映することから、SXでは冠抵抗血管における内皮細胞由来弛緩能が低下していると推察された。(3)脂質代謝:対象としたSX群と対照群では総コレステロール(Tchol)、HDL-chol、LDL-chol、VLDL-chol値に有意差はなかった。しかし、酸化LDLは対照群に比べてSX群で有意に大であった。血管内皮由来弛緩能低下の原因としてLDLの過酸化による内皮障害が強く示唆された。(4)薬物治療効果:運動負荷試験時の心電図ST低下所見から薬物治療効果を判定した。アデノシン受容体拮抗作用を有するアミノフィリンの前投与によりSX群の運動負荷時ST低下は有意に軽減した。運動負荷時の心筋虚血にcoronary steal現象の関与が示唆された。coronary steal現象が内皮障害により発生するとの仮説をたてSX群にACE阻害薬(シラザプリル)を3か月間投与したところ、運動負荷時のST低下は投与後1か月から有意に軽減し、投与後3か月後ではさらに軽減する傾向にあった。ACE阻害薬の心筋虚血発生(運動負荷時)予防効果が示唆された。
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