細動脈からコナゲナーゼ、及びパパインを用いて細胞単離を行っている。組織が小さいため必ずしも十分な量の活性のある単離細胞がとれないこともあるが、よく弛緩した平滑筋細胞を得られることもある。これらの細胞では薬理学的反応も保たれており細胞膜伸展時のカルシュウム電流測定、細胞内カルシュウム測定実験に供することが可能であると考えている。しかし今回は、膜電位固定用アンプが入手出来なかったため、膜電位、細胞内カルシュウムの検討を単離した細動脈組織を用いて行った。骨格筋動脈、腸間膜細動脈とも内圧上昇によって膜電位の脱分極を認めた。 膜電位の浅くなる大きさ(脱分極幅)は内圧を40から100mmHgとしたときどちらもおおよそ15-20mVであったが、この両者の血管には同様の内圧で膜電位の絶対値の違いがある印象がある。この差がこれらの血管における筋原性緊張の大きさを説明する可能性がある。これはCaチャネルの動作範囲が密接に関与していると思われる。また今年発表したCaチャネルアゴニスト処理が腸間膜細動脈の筋原性反応を増強すること、Na/Ca交換機能が腸間膜細動脈では骨格細動脈に比べてあまり働いていないということなどをVDCCを通じたCa流入量の多寡で説明できるかも知れない。今後は両者の膜電位の絶対値に注目し内圧との関連、これを維持する機構の解明を行う。これは細動脈血管平滑筋の臓器特異性を解明することとなり、最終的には臓器特異的な血管作動物質の発見に役立てたい。
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