研究概要 |
1.大型動物におけるけい経脈性冠動脈造影実験 放射光を用いた経静脈性冠動脈造影法(造影剤の静脈内注入による冠動脈造影法)を臨床に応用し得るかどうか,イヌ(n=10)ならびにヤギ(n=1)を用いて最終的な造影実験を行った。特にヤギの造影では,ヒトと同程度の体厚のヤギに対し高エネルギー物理学研究所の多極ウィグラー型ビームライン(ARNE1)で得られる強度の大きい放射光を用いて,ヒトでの経静脈性冠動脈造影を想定した実験を行った。その結果,イヌさらにはヤギにおいても冠動脈を経静脈性に造影することに成功した。また,ヤギの造影の際のX線の被曝線量は従来の冠動脈造影検査と同程度であることも確かめられた。したがって,放射光による経静脈性冠動脈造影はヒトに対しても応用可能であると思われた。以上の成果をもとに,我々は,放射光による経静脈性冠動脈造影を新たな非侵襲的冠動脈造影法として,その臨床応用を試みることを計画している。準備は整ってきており,平成8年には実施できる予定である。 2.経静脈性冠動脈造影像からの冠血流計測法の開発 経静脈性冠動脈造影の発展的応用といて,この造影像にtransit-time analysis法を用いて冠血流量の算出を試みた。この方法による冠血流計測の精度評価には,開胸イヌ(n=6)と超音波血流プローブを植え込んだ慢性非開胸イヌ(n=4)において,それぞれの左冠動脈前下行枝流量を実測しながら経静脈性冠動脈造影を行い,その実測値と造影像からの算定値とを比較した。10頭での結果をまとめると,実測値と算定値との差は約10%程度であり,経静脈性造影像からの冠血流計測法は有用であると考えられた。
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