LDL表層脂質膜の物理化学的特性として、脂質膜の流動性を5-DOXYL-stearic acidをスピンラベル剤として用いESRにて測定した。基礎的研究では、LDLアフィニティカラム(LA-01:KANEKA)はヒトのLDLを良く抽出し、サンプル内にわずかにVLDLを含むのみであった。5-DOXYL-stearic acidは濃度を薄くするとESRシグナルが小さく、オーダーパラメータSの計算が困難であり、濃度を濃くするとスピンラべルしたLDLの回収率が落ちるので、80mg/mlを適切な濃度とした。正常者より得たLDLのオーダーパラメータSは0.56±0.01(n=6)であり、老年者のそれは0.58±0.01(n=7)と両者間には有意の差(p<0.01)があった。この血清をプールし、LDLを抽出しコレステロール濃度として50mg/dlに調整し、ラット胸部大動脈輪状標本と12時間インキュベーションしたのちに、ノルエピネフリンに対する等尺収縮とアセチルコリンに対する内皮依存性拡張反応をみた。LDLをインキュベーションした大動脈標本は、クレブス液に12時間インキュベーションした標本よりもノルエピネフリンに対する収縮反応はわずかに亢進し、アセチルコリンに対する拡張反応は減弱したが、インキュベーションに供したLDLのオーダーパラメータSの違いがこれら収縮反応(112±14% vs 115±17%)や拡張反応(89±16% vs 88±16%)に影響を及ぼすことはなかった。これらの研究についてはさらに検討を加え近い将来論文とする予定である。
|