本研究の目的は、実験的に圧負荷肥大心を作成し、冠予備能の変化、高速心房ペーシングによる局所心筋(心筋内層、外層)の機能と冠血流量の関係、局所心筋の血管床の変化(血管新生(angiogenesis)と細動脈の器質的変化)と心筋肥大との関係を検討することにより、圧負荷肥大心では血管新生(angiogenesis)が十分かどうかを明らかにすることであった。本研究では、この問題を解明すべく、臨床モデルを念頭におき長期間の圧負荷肥大心を実験的に作成することとしたが、左腎動脈クリップによる腎性高血圧では術後死亡することが多かった。このため、圧負荷肥大心作成法として、シルクで両側腎の被膜全体を被って作成するperinephritic hypertensionに方法を変更した。現在、このモデルによる肥大心が作成されたところであり、本実験に入ったところである。この間、臨床例で肥大型心筋症における高速ペーシングによる検討を行った。肥大型心筋症17例、胸痛を主訴として検査を行い、心機能、冠動脈が正常であった7例を対象に、心拍数150心拍/分までの右房ペーシングを行い、ペーシング中、直後に左室圧と左室造影を同時に行った。心拍数の上昇に伴い、左室収縮末期径は減少せず(収縮予備能の低下)、またペーシング後、拡張末期圧、拡張期圧・容積関係の上昇が認められた(拡張能の低下)。心筋生検では、心内膜下の血管径及び数が少ない傾向にあり、頻脈時の収縮予備能の低下、拡張能の低下には、肥大心筋のangiogenesisの低下が関与している可能性が示唆された。
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