研究概要 |
1.目的 運動負荷タリウム-201心筋シンチグラフィーで左室前壁に再分布を認める狭心症群(n=29),再分布を認めない梗塞群(n=12)および健常対照群(n=11)について,一次元chemical shift imaging(1D CSI)によるヒト心筋内高エネルギーリン酸定量を試み,この方法がそれらを鑑別できるかどうかについて検討した。 2.方法 装置はSIGNA1.5Tで,5.75M hexamethylphosphoric triamide(HMPT)0.5mlを表面コイル(送信8インチ,受信5インチ径)の中心に置き,sagittal方向のスライス選択パルスで左室部分(6-8cm)を選択して,FOV32cmでcoronal方向に16のphase ensoding(各ステップ32回加算平均)を行う領域選択加味P-31 1DCSIを実施した。励起パルス強度と検出感度は一定とし,心電図同期で収縮期に,パルス繰り返し時間は2xRRで信号を収集した。HMPTと健常者心筋の縦緩和時間,パルス繰り返し時間およびファントム実験で求めたHMPT部分と心筋部分でのフリップ角から縦緩和による飽和因子を算出してピーク面積を補正し,ATP(βリン酸基)については心腔内血液からのシグナルの混入についての補正も行った。心筋容積はスピン・エコー像から測定し,比重を1.05として心筋重量を推定した。 3.結果 左室前壁phosphocreatine含量は対照群12.14±4.25[SD]>狭心症群7.64±3.00>梗塞群3.94±2.21μmoles/g湿重量で三群間に有意差(p<0.05)を認めた。ATP含量は対照群7.72±2.97,狭心症群6.35±3.17,梗塞群4.35±1.52で対照群と梗塞群の間に有意差(p<0.05)を認めた。 4.結語 以上より,p-31 1D-CSI法による心筋内高エネルギーリン酸含量の定量は可能で,左室前壁内ATP含量の定量により心筋viabilityの判定ができる可能性が示唆された。
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