研究概要 |
1.目的 三次元chemical shift imaging(CSI)による心筋内高エネルギーリン酸定量について検討した. 2.方法 装置はSIGNA 1.5Tで,表面コイル(送信8インチ,受信5インチ径)を用い,傾斜磁場で一方向にスライス選択(スライス厚2.5cm)し,FOV40cmで,他の二方向にそれぞれ16の位相エンコードを行う三次元リンCSI(1 voxelは2.5x2.5x2.5立方cm)を次の2つの方法で試みた.(1)第1法:axial方向スライス選択,他の二方向に位相エンコード.外部標準物質の5.72M hexamethylphosphoric triamide(HMPT)はその2mlを表面コイルの中心に置いた.(2)第2法:coronal方向スライス選択,他の二方向に位相エンコード.この場合,HMPTは被検者の左側胸部にあたる部位に置いた.いずれも検査時間短縮のためreduced k-space samplingを行った. 3.結果 (1)第1法を,長さ32cm・幅25cm・高さ10cmの容器に147mMのリン酸溶液を満たしたファントムについて実施した.HMPTの縦緩和時間(T1)は11.5秒でその部位のフリップ角は145度,147mMリン酸溶液のT1は11.0秒で表面コイルから5cm(ヒトの左室前壁部位に相当)でのフリップ角は75度であった.それらより縦緩和による飽和因子を算出して信号強度を補正し,リン酸溶液の濃度を算出したところ139mMと実際の濃度に近く,この方法による定量可能性が示唆された.しかしこれをヒト心筋に応用したときの問題は,1 voxel内の心筋重量推定が大変困難なことであった.(2)第2法を上記と同じファントムおよび健常成人について行ったところ,いずれの場合もHMPTの良好な信号がとれず,この方法では標準物質を表面コイルの感度領域内に置くことが困難であった.(3)三次元CSIは信号の由来部位と各部位での化学シフトの違いを示すのに有用であった. 4.結語 心筋内リン化合物定量には,現段階では三次元CSIより一次元CSIの方が適していると考えられる.
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