研究概要 |
砂ネズミ一過性前脳虚血後に海馬にみられるチロシン残基リン酸化亢進の局在部位の同定とラットカイニン酸投与モデルにおけるチロシンリン酸化亢進の有無について検討した。砂ネズミ一過性前脳虚血8時間後にチロシンリン酸化の亢進がイムノブロットにおいてみられたが、抗リン酸化チロシン抗体を用いた免疫組織化学染色では神経細胞体、神経終末部など神経細胞組織にリン酸化チロシンの局在を認めた。またラットカイニン酸投与モデルでもカイニン酸で誘発された痙攀発生4時間後から分子量160,115,102,92,85kDのポリペプチドのチロシンリン酸化の亢進が見られた。チロシンキナーゼの特異的阻害剤であるradicicolを痙攀発生後に投与するとチロシン残基リン酸化の亢進が抑制されるとともに、本来なら発生するはずの海馬CA1およびCA3領域の神経細胞死が部分的に抑制された。以上の結果から脳虚血あるいは興奮性アミノ酸毒性に際して発生する神経細胞の選択的細胞死にチロシン残基リン酸化の亢進を介して細胞内情報伝達系が関与していることが明らかとなった。
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