本研究では低カリウム血症下の心房細動発現の機序としてtriggered activityが関与しているかどうか、関与しているとすれば自律神経の緊張度がどのように影響するのかについて検討するのが目的である。本年度も昨年度に引き続き低カリウム血症下の心房筋電気生理学的特性および心房細動誘発性に対して自律神経刺激がどのように影響するかを検討した。〈方法〉雑種成犬(10・13kg)をネンブタール麻酔(30mg/kg)および人工呼吸下に胸骨正中切開で開胸した。心房刺激および記録用の双極電極を心房心外膜側の7か所(右房高位部2か所、右心耳、右房側壁中部、右房側壁下部、左心耳、左房後壁下部)に装着した。さらに、monophasic actionpotential (MAP)記録用の電極を右房および左房の各々1か所の心外膜側に装着した。大腸内に挿入したネラトンカテーテルを通してイオン交感樹脂(polystyren sulfonic acid calcium)を注腸して低カリウム血症を作成した。体表面心電図、心房電位およびMAP記録下に心房期外刺激法を行った。この心房期外刺激法はイオン交感樹脂注腸前と注腸の1時間後に施行し、左星状交感神経節および左迷走神経の電気刺激下でも施行した。〈結果〉低カリウム血症下では心房筋の不応期や心房内伝導時間の変化が少ないにもかかわらず心房細動が生じやすくなったり、左星状交感神経節刺激および左迷走神経刺激ともに心房細動はさらに生じやすくなった。MAPは左星状神経節刺激、左迷走神経刺激ともに短縮傾向を認め、左星状神経節刺激でMAPの形態が軽度に変化する傾向を認めた。これらの所見では低カリウム血症下の心房細動発現にはreentry機序以外にもtriggered activity機序が関与している可能性が示唆された。
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